Zero-shot Promptingは、具体的な例を提供せずに、タスクの説明だけでAIに回答を求める最も基本的な手法です。大規模言語モデルが持つ膨大な事前学習知識を活用し、単発の指示で目的を達成します。
最適な使用ケース
避けるべきケース
❌ 曖昧な指示
「この文章を良くして」
✅ 明確な指示
「以下の営業メールを、より親しみやすく、
行動を促すような表現に書き直してください。
文字数は現在の80%程度に短縮し、
冒頭に相手の名前を入れて個人的な印象を与えてください。」
基本構造
【役割設定】
あなたは[専門分野]の[専門家レベル]です。
【状況説明】
[背景情報・制約条件]
【具体的指示】
[実行してほしいタスクの詳細]
【出力形式】
[期待する回答の形式]
制約の種類と指定方法
時間制約: 「30分で完了できる範囲で」
品質制約: 「プロフェッショナルレベルで」
量的制約: 「5つのアイデアを」
形式制約: 「箇条書きで」
対象制約: 「中学生にも理解できるように」
あなたは経験豊富なビジネスコンサルタントです。
新規事業提案のプレゼンテーション資料について、
以下の要素を含む構成案を作成してください:
【必須要素】
- 市場機会の分析
- 競合優位性
- 収益モデル
- リスク評価
- 実行計画
【制約条件】
- プレゼン時間:15分
- 対象:役員レベル
- スライド数:10-12枚程度
【出力形式】
各スライドのタイトルと主要ポイント(3-4点)を記載
あなたは創造性豊かなストーリーテラーです。
以下の設定でショートストーリーのプロットを作成してください:
【設定】
- ジャンル:SF
- 主人公:AI研究者(30代女性)
- テーマ:人間とAIの共存
- 長さ:短編小説(5,000字程度)
【要求事項】
- 読者の関心を引く導入部
- 明確な対立構造
- 感動的な結末
- 現代社会への示唆を含む
【出力形式】
1. あらすじ(200字)
2. 場面構成(起承転結で4場面)
3. キャラクター設定(主要3名)
4. 核となるメッセージ
研究結果: 特定の表現を追加することで性能が向上
効果的な表現
「これは私のキャリアにとって非常に重要です」
「深呼吸をして、この問題に段階的に取り組んでください」
「あなたの専門知識を活かして最高の回答をお願いします」
「完璧な答えを見つけるまで時間をかけて考えてください」
「論理的に分析して」
「根拠を示しながら」
「複数の視点から検討して」
「因果関係を明確にして」
「段階的に説明して」
精度指標
効率指標
創造性評価(1-5点)
読みやすさ評価(1-5点)
Few-shot Promptingは、目的のタスクに関する数個の具体例を提供し、AIにパターンを学習させてから実際のタスクを実行させる手法です。例示による暗黙的な指導により、より精密で一貫性のある出力を実現します。
良い例の組み合わせ
例1: 基本的なケース(標準的な状況)
例2: 複雑なケース(多要素を含む状況)
例3: 例外的なケース(特殊な条件下)
例4: エッジケース(境界線上の判断)
高品質な例の特徴
難易度の段階的上昇
例1(簡単):基本的なパターン理解
例2(標準):一般的な応用ケース
例3(複雑):高度な判断を要する場面
以下の例を参考に、商品レビューを分析して
感情(ポジティブ/ニュートラル/ネガティブ)と
主要な言及ポイントを抽出してください。
【例1】
レビュー:「配送が早くて驚きました。商品も期待通りで満足です。」
感情:ポジティブ
言及ポイント:配送速度、商品品質
【例2】
レビュー:「値段の割には普通かな。特に悪くはないけど印象に残らない。」
感情:ニュートラル
言及ポイント:価格対効果、印象度
【例3】
レビュー:「写真と実物が全然違う。返品したいくらいがっかりした。」
感情:ネガティブ
言及ポイント:商品説明との相違、期待値との差
【分析対象】
レビュー:「サポートの対応が丁寧で助かった。商品自体はまあまあです。」
以下の例を参考に、受信メールを適切なカテゴリに分類してください。
【例1】
件名:「システム障害発生のお知らせ」
本文:「午後2時頃より一部システムに障害が発生しております...」
カテゴリ:緊急対応
優先度:高
理由:システム障害は業務に直接影響するため
【例2】
件名:「来月の会議議事録について」
本文:「来月15日の定例会議の資料準備を...」
カテゴリ:通常業務
優先度:中
理由:定例業務で期限に余裕がある
【例3】
件名:「お疲れさまでした」
本文:「本日はお疲れさまでした。また明日もよろしく...」
カテゴリ:社交的連絡
優先度:低
理由:業務に直接関係しない挨拶メール
【分類対象】
件名:「契約書修正のご相談」
本文:「契約条項について相談したい点がございます...」
従来の手動例示に代わり、AIが自動的に多様な例を生成する手法:
「以下のタスクについて、多様な例を3つ自動生成してから実行してください:
タスク:顧客からの苦情メールに対する返信文作成
自動生成する例の条件:
- 異なる苦情内容(品質、配送、サービス)
- 異なる感情レベル(軽微、中程度、深刻)
- 異なる顧客タイプ(新規、既存、VIP)
各例について、以下を含めてください:
- 苦情の内容
- 適切な返信文
- 配慮したポイント
例の生成後、実際のタスクを実行してください:
[実際の苦情メール内容]」
要因 | Zero-shot | Few-shot |
---|---|---|
一貫性 | 低-中 | 高 |
準備時間 | 短 | 長 |
精度 | 中 | 高 |
創造性 | 高 | 中-高 |
複雑なタスク | 困難 | 適合 |
特定形式 | 困難 | 得意 |
Zero-shot適用時
初期コスト:低(即座に実行可能)
修正コスト:高(トライ&エラーが多い)
総コスト:中-高(反復的改善が必要)
Few-shot適用時
初期コスト:高(例の準備が必要)
修正コスト:低(高精度で一発成功が多い)
総コスト:低-中(効率的な達成)
実験結果(一般的傾向)
効果的な配置順序
Chain-of-Thought(CoT)Promptingは、AIに段階的な推論プロセスを明示的に示させる手法です。複雑な問題を小さなステップに分解し、論理的な思考の連鎖を通じて最終的な答えに到達させます。
1. 問題理解:何を求められているか
2. 情報整理:与えられた条件の整理
3. 解法選択:適切なアプローチの決定
4. 段階実行:ステップバイステップの実行
5. 結果検証:答えの妥当性確認
明示的CoT
「以下の問題を段階的に解いてください:
【問題】
[具体的な問題文]
【解答プロセス】
ステップ1: 問題の理解と条件整理
ステップ2: 解法の選択と戦略決定
ステップ3: 計算・推論の実行
ステップ4: 結果の確認と妥当性検証
【最終回答】
[明確な答え]」
以下の問題を段階的に解いてください:
【問題】
田中さんは果物屋で、りんごを1個120円、みかんを1個80円で売っています。
今日、りんごとみかんを合わせて50個売り、売上は4,800円でした。
りんごとみかんをそれぞれ何個売ったでしょうか?
【解答プロセス】
ステップ1: 変数の設定
- りんごの個数をx個、みかんの個数をy個とする
ステップ2: 条件式の作成
- 個数の条件:x + y = 50
- 売上の条件:120x + 80y = 4,800
ステップ3: 連立方程式の解法
- 第1式からy = 50 - x
- 第2式に代入:120x + 80(50 - x) = 4,800
- 計算:120x + 4,000 - 80x = 4,800
- 簡略化:40x = 800
- 解:x = 20
ステップ4: もう一つの変数を求める
- y = 50 - 20 = 30
ステップ5: 検証
- 個数確認:20 + 30 = 50 ✓
- 売上確認:120×20 + 80×30 = 2,400 + 2,400 = 4,800 ✓
【最終回答】
りんご:20個、みかん:30個
以下の状況を分析し、最適な選択を推論してください:
【状況】
あなたは新製品のマーケティング責任者です。
- 予算:1,000万円
- 期間:3ヶ月
- 目標:認知度30%達成
- 競合:類似製品が2社存在
- ターゲット:20-40代の働く女性
選択肢:
A) テレビCM中心の戦略
B) SNSインフルエンサー活用戦略
C) 体験型イベント中心戦略
【分析プロセス】
ステップ1: ターゲット分析
- 20-40代働く女性の媒体接触傾向
- テレビ視聴:平日夜、休日昼間
- SNS利用:Instagram、Twitter中心、平日昼休み・通勤時間
- イベント参加:週末、関心の高いテーマのみ
ステップ2: 各戦略のコスト効率分析
A) テレビCM
- コスト:800万円(制作+放映)
- リーチ:高い(200万人)
- エンゲージメント:低い
- 信頼性:高い
B) SNSインフルエンサー
- コスト:400万円(起用料+制作)
- リーチ:中程度(50万人)
- エンゲージメント:高い
- 信頼性:中程度
C) 体験型イベント
- コスト:600万円(会場+運営)
- リーチ:低い(5万人)
- エンゲージメント:非常に高い
- 信頼性:高い
ステップ3: 認知度達成の可能性評価
- 認知度30% = 60万人の認知が必要(想定母集団200万人)
- A案:リーチは高いが印象薄で認知定着率15% = 30万人
- B案:エンゲージメント高く認知定着率40% = 20万人
- C案:強い印象で認知定着率80% = 4万人
ステップ4: 複合戦略の検討
- B+C組み合わせ:1,000万円の予算内
- 期待認知:20万 + 4万 = 24万人(不足)
- A+C組み合わせ:予算オーバー
ステップ5: リスク要因の評価
- A案:制作期間2ヶ月、放映効果の不確実性
- B案:インフルエンサーリスク、炎上可能性
- C案:コロナ等によるイベント中止リスク
【推奨戦略】
A) テレビCM戦略を選択
理由:
1. 目標認知度には不足するが最も近い数値
2. 残り200万円でデジタル広告補完可能
3. ブランド信頼性構築に最も効果的
4. 競合差別化として「安心・信頼」を訴求可能
基本パターン
[問題文]
Let's think step by step:
日本語バージョン
[問題文]
段階的に考えてみましょう:
効果的な誘導表現
「深呼吸をして、この問題を段階的に解いてください」
「時間をかけて、論理的に分析してください」
「一歩ずつ慎重に推論を進めてください」
「複数の視点から検討して、最適解を見つけてください」
数学問題(GSM8K)
常識推論(CommonsenseQA)
記号推論(Last Letter Concatenation)
# 役割設定
あなたは[専門分野]の[経験年数][専門家レベル]です。
# 背景・状況
[現在の状況]
[制約条件]
[関係者]
# タスク詳細
## 目的
[何を達成したいか]
## 要求事項
- [必須要件1]
- [必須要件2]
- [必須要件3]
## 制約条件
- [制約1]
- [制約2]
# 入力データ
[処理対象のデータ]
# 出力形式
[期待する回答の構造]
# 評価基準
[何を基準に良し悪しを判断するか]
# システム設定
## ペルソナ
- 役割: [具体的な職業・立場]
- 経験: [専門年数・実績]
- 特徴: [思考パターン・価値観]
## コンテキスト
- 時期: [いつの時点]
- 場所: [どこで]
- 相手: [誰に向けて]
- 目的: [なぜ]
# タスク仕様
## プライマリーゴール
[最優先で達成すべき目標]
## セカンダリーゴール
[可能であれば達成したい目標]
## 成功指標
[定量的な成功基準]
# 制約マトリックス
| 制約タイプ | 内容 | 優先度 |
|-----------|------|--------|
| 時間 | [期限] | 高 |
| 予算 | [上限] | 中 |
| 品質 | [最低基準] | 高 |
# 入力仕様
## データ形式
[入力の形式・構造]
## 前提条件
[入力データについての前提]
# 処理要件
## 分析観点
1. [観点1]
2. [観点2]
3. [観点3]
## 思考プロセス
1. [ステップ1]
2. [ステップ2]
3. [ステップ3]
# 出力仕様
## 形式要件
[構造・レイアウト]
## 内容要件
[含めるべき要素]
## 品質要件
[達成すべきレベル]
# 検証・評価
## セルフチェック項目
- [ ] [チェック項目1]
- [ ] [チェック項目2]
- [ ] [チェック項目3]
# 実行
[実際のタスク内容]
階層構造の明確化
# レベル1: メインカテゴリ
## レベル2: サブカテゴリ
### レベル3: 詳細項目
#### レベル4: 補足事項
強調とハイライト
**重要**: 必ず守るべき事項
*注意*: 気をつけるべき点
`コード`: 具体的な指示
> 引用: 参考情報
リストの効果的活用
順序あり(手順):
1. 最初に実行すること
2. 次に実行すること
3. 最後に実行すること
順序なし(要素):
- 考慮すべき要素A
- 考慮すべき要素B
- 考慮すべき要素C
チェックリスト:
- [ ] 完了すべきタスク1
- [ ] 完了すべきタスク2
- [x] 完了済みタスク3
表による整理
| 項目 | 条件A | 条件B | 条件C |
|------|-------|-------|-------|
| 費用 | 高 | 中 | 低 |
| 時間 | 短 | 中 | 長 |
| 品質 | 高 | 高 | 中 |
---思考エリア---
[AIの内部推論プロセス用]
ここで分析・検討を行い、
最終的な判断に至るまでの過程を記述
---出力エリア---
[最終的な回答内容]
ユーザーに提示する最終結果のみを記述
---アナリスト視点---
データと事実に基づく客観的分析
---ストラテジスト視点---
戦略的観点からの方向性提示
---実務担当者視点---
実行可能性と現実的な制約の考慮
---統合判断---
各視点を総合した最終提案
失敗例
「この文章を改善して」
問題点
改善策
「この営業資料を以下の観点で改善してください:
1. 読みやすさ:専門用語を20%削減
2. 説得力:具体的数値を3つ追加
3. 簡潔性:全体を現在の80%に短縮
4. 視覚性:重要ポイントを太字で強調
改善後は元の文章との比較表も作成してください。」
失敗例
「プレゼンの構成を考えて」
問題点
改善策
「新入社員向けの会社説明会(30分)で使用する
プレゼンテーション構成を考えてください。
【背景】
- 対象:今年度新入社員50名(文系・理系混合)
- 目的:会社理解深化と帰属意識向上
- 時期:入社3日目(基本研修終了後)
- 場所:本社会議室(プロジェクター使用可)
【制約】
- 時間:30分(質疑応答5分含む)
- スライド:15-20枚程度
- 双方向性:Q&Aセッション必須
【期待する成果】
- 会社のビジョン・ミッションの理解
- 自分の役割への認識
- 先輩社員との距離感縮小」
失敗例
「完璧な小説を書いて」
問題点
改善策
「以下の条件でショートストーリーの初稿を作成してください:
【基本設定】
- ジャンル:現代ファンタジー
- 主人公:高校生(16歳)
- テーマ:友情と成長
- 分量:3,000文字程度
【構成要求】
- 起承転結の明確な構造
- 読者の共感を呼ぶキャラクター
- 現実的な設定の中のファンタジー要素
【初稿の位置づけ】
これは初稿です。後で以下の観点で改善します:
1. キャラクター描写の深化
2. 伏線と回収の精密化
3. 文体の統一と洗練
まずは骨格となるストーリーを完成させてください。」
C - Clear(明確性)
チェック項目:
- 指示は具体的で測定可能か?
- 完了条件は明確に定義されているか?
- 曖昧な表現(「良い」「適切な」等)はないか?
L - Limited(制限性)
チェック項目:
- 適切な制約条件が設定されているか?
- 範囲の境界は明確か?
- 優先順位は示されているか?
E - Exemplified(例示性)
チェック項目:
- 必要に応じて具体例が提供されているか?
- 期待する品質レベルが例示されているか?
- 避けるべきパターンが示されているか?
A - Actionable(実行可能性)
チェック項目:
- AIが実行可能なタスクか?
- 必要な情報は全て提供されているか?
- 段階的な実行が可能か?
R - Relevant(関連性)
チェック項目:
- 目的と手段が整合しているか?
- 文脈設定は適切か?
- 対象読者への配慮があるか?
Week 1: ベースライン確立
1. 現在のプロンプトで10回実行
2. 結果を客観的に評価
3. 問題パターンを特定
4. 改善優先順位を決定
Week 2: 要素別改善
1. 最重要要素を1つ選択
2. その要素のみを改善
3. A/Bテストで効果確認
4. 統計的有意性を検証
Week 3: 統合最適化
1. 改善された要素を統合
2. 全体バランスを調整
3. 予期せぬ副作用をチェック
4. 最終版を決定
Week 4: 検証と標準化
1. 多様な条件下でテスト
2. 再現性を確認
3. 使用ガイドライン作成
4. チーム内で知識共有
基本手法の習得により、プロンプトエンジニアリングの80%の効果を実現できます。
Zero-shot: 速度重視、創造性重視、一般的タスク Few-shot: 精度重視、一貫性重視、特定形式 CoT: 複雑な推論、段階的分析、論理性重視
基本手法をマスターしたら:
基本手法の確実な習得が、高度なプロンプトエンジニアリングへの礎となります。反復練習と継続的改善を通じて、これらの技法を自然に使いこなせるレベルまで高めましょう。